題名「クラウスの大冒険」 ネタ提供、アルカスさん。  アマゾン。人からまだ支配されることのない広大な熱帯雨林が広がるジャングルの奥地に、 似つかわしくない、白髪にガーゼル髭を生やした執事服の格好の男、世界有数の 大富豪、三千院家の執事長を務める、倉臼征士郎の姿がそこにはあった。  彼は今、三千院家の現当主である三千院帝の密命を受け、この地へと来ていたのだ。 「しかし、こんなところに本当にあの秘宝が……」  捜索を初めて早四日。目的のものがあるとされる洞窟の前で、ついついそんな声を 漏らした。執事である彼は、勿論主には絶対の信頼を寄せている。が、そんな彼でも 主の言葉を信憑性を疑わざるを得なかった。  三千院帝からの密命、それはこの地に眠るとされる伝説の秘宝、レッドサファイヤを 手に入れること。  そして、ドラゴンが守るとされるレッドサファイヤが眠るという洞窟の中は、 見る限りでは、真っ黒。内部を観察することは困難だった。  だが、戸惑ったのは数秒。覚悟を決め、ドラゴンなど迷信だと自分に言い聞かせて、 闇が支配する洞窟へと足をすすめた。  中は無音、彼の足音だけが洞窟に響く。生き物の住んでいる気配はまったくしない。 そして暫く足を進めたところで、執事として鍛えあげられた勘が、危険だと彼に告げた。 「……っ!?」  シュッと何かがこちらに迫ってきた。間一髪避けたところで、何かが頬にかすれて 岩の壁に突き刺さる。一滴の血が頬から流れ落ちた。 「これは……」  誰かが放ったのか。それともここを通りすぎると、どこからか放たれてるように なっているのか。そこには矢が突き刺さっていた。どちらにしても自然のものとは 考えにくい。  それを平然と見つめ、クラウスは洞窟の奥地へと足を進めた。  迷路のようなダンジョン、自然のものとは思えない数々のトラップをくぐり抜け、 クラウスは洞窟の奥地へとたどり着いた。  光が全く届かない洞窟の最後、見る限りでは何もない。はやり迷信だったのかと 思い引き返そうとすると、謎の声がクラウスに語りかけた。 『汝の望みは何か』  クラウスは、どこからかそう問うてくる謎の声に対して若干恐怖を覚えたが、 ためらうことなく答えた。 「我が望みは血のように赤く、炎のように熱き、この地に眠るとされる伝説の サファイヤ」  すると背後から鋭い殺気と、とてつもない寒気がクラウスを襲う。 声は言った。 『ならば、この地で朽ち果てよ』  クラウスが振り向くと、一体どこから現れたのか、地を揺るがすような うなり声と、強烈なさっきをもったモノがおぞましい姿を見せた。  暗闇により正確な姿まではみえない、しかし姿が見えなくとも心が凍り付くような 驚異の存在であることがわかる。 「ふっ……」  即座に服に忍ばせていた、フォークとナイフをとっさにソレに向かって投げつける。 吸い込まれるようにフォークとナイフは標的に向かっていき、突き刺さることなく ソレの中に消えた。  伝説は本当だったのか、その後なすすべなくクラウスはソレの前にひれ伏した。 「くっ…かっ……」  動かない体。それをどうしかしようと賢明に体に力を込めようとするが、動いては くれない。  死を覚悟した。ソレが腕に見える触覚をクラウスに振り下ろそうと伸びてくる。 死のカウントダウンが始まった時に、不意に三千院の人々の姿が頭に浮かんできた。 「異境の地で誰にも悟られることなく生を終えてしまうとは、無念」  そう呟く。とたん、触覚が頭を貫き、クラウスは苦しむことなく永遠の眠りについた。 「……はっ!?」  そして、クラウスは目を覚ました。  周りを見渡して自分の状況を確認してみると、自分はふかふかのベットの 上にいて、周りには煌びやかな調度品がそろえられている。 「ここは……私の部屋? 私は、生きている?!」  はてな、と顎に手をやる。そして結論に至った。 「よくよく考えてみたら、私はそもそもアマゾンになんて行ってないじゃないか。 なんだ、ただの夢ではないか」  なんだなんだと、笑い。時計に目をやった。 時間は、いつも起きている時刻を十分ほど過ぎていた。  急いでクラウスは起きると、早速着替えを始めるのであった。 エンド。   あとがきみたいなもの。 どうも、師走です。よく考えたら猫茶会で初めて発表する小説。 というか、自分には短編を書く才能なんてなくて、ネタすら浮かばない状態だった のですが、親切なアルカスさんがネタ提供してくれました><  「アレンジしてかまいませんよ」って事だったんですがそんまんまになっちゃいました(( アルカスさんごめんなさい>< 最後に、読んでくれてありがとうございました。